北欧のテキスタイルにみる、日本との繋がり

テキスタイルとは


テキスタイルという言葉を耳にしたことはあっても、詳しくはわからない方も多いのではないでしょうか?

テキスタイルとは、広義で「布地そのものや柄」のことを指します。

私たちが普段着ている衣服は、立派なテキスタイルアイテムのひとつ。

また、水玉やチェックといった街中でよく見かける柄・模様も、テキスタイルに該当します。

主に縦糸と横糸を組み合わせた織物が、テキスタイルの一例としてイメージしやすいかもしれません。

しかし、実は織物だけでなく、編み物や革・不織布などの素材全般に至るまで、テキスタイルに含まれます。

さらに織物や布地に関しては、ファブリックと呼ばれることもあります。

両者の厳密な使い分けは難しいところですが、ファブリックはテキスタイルの一部だと考えていいでしょう。


テキスタイルとアート

近年、ファッションやインテリアの分野で注目を集めているテキスタイル。

テキスタイルデザイナーの活躍が取り上げられるようになり、美術館での展覧会も各地で行われています。

布地は人類の文明に欠かせないものであり、染め・織りといった技法によってさらなる進化を遂げてきました。

古代より世界中の国々で、文化・風土に根ざしたテキスタイルが生み出されています。

独特の色や模様を施した民族衣装も、伝統的なテキスタイルのひとつです。

一方で、美術・芸術からみたテキスタイルは、特にヨーロッパで発展してきました。

スペインやイタリア、フランスでは、重厚な布地に色鮮やかな刺繡をあしらったタペストリーが数多く制作されています。

このようなタペストリーは、テキスタイルであると同時に絵画作品のひとつとも見なせるでしょう。

さらに19世紀になると、アーツ・アンド・クラフツ運動やアールヌーヴォーの流行によって、市民文化にテキスタイルが受容されていきます。

室内外の装飾や家具、壁紙に使用するためのテキスタイルがデザインされ、高い人気を得ました。

日本でも、代表的な例としてウィリアム・モリスのテキスタイルデザインが広く知られています。

一見、相容れないように思われるアートと人々の営み。

衣と住に深く関与するテキスタイルは、生活習慣に溶け込んだアートの表れともいえるかもしれません。

参考:テキスタイルって何?ファブリック、マテリアルとの違いも解説 | TECTLI
テキスタイル | 現代美術用語辞典ver.2.0


北欧のテキスタイル


スウェーデン・デンマーク・ノルウェー・フィンランドなど、北欧諸国で生まれたテキスタイルは、日常に寄り添った視点でデザインされています。

その背景には、第二次世界大戦後の社会変化が影響していたといわれています。

各国が戦後の経済立て直しを図る中、労働力を確保するために、女性が働くことも推奨されるようになりました。

食器をはじめとした日用品は、使いやすさを重視した設計に。

一方で、無駄を省く機能性だけでなく、生活を彩るデザイン性へのニーズも高まっていきました。

新しい時代の流れに応えるべく、今なお愛されているテキスタイルブランドが誕生したわけですね。

いわゆる北欧テキスタイルは、本国はもちろん、日本での人気も高くなっています。

どのブランドのテキスタイルも、北欧の自然で見られる動植物をモチーフとしていることが多いといえるでしょう。

特徴をとらえたシンプルなアイコンが遊び心たっぷりに並べられ、目を引くポイントに。

さらに温かみのある色使いで仕上げているところも、見る者を惹きつける要素のひとつです。

北欧のテキスタイルもまた、生活に身近なアートとして、人々の心を潤しているのではないでしょうか。

参考:温かみのあるデザインに惹かれる。北欧デザインの魅力について知ろう
北欧テキスタイルで、暮らしにぬくもりと使いやすさをプラスしてみませんか | CONORU


北欧と日本、テキスタイルを通して


今や、北欧のテキスタイルデザインは日本の暮らしにしっかりと馴染みつつあります。

テキスタイルデザインを食器に描いたり、布地を寝具や手芸用品に活用したりと、見渡せばいつの間にか傍にいる存在。

北欧と日本の間には、テキスタイルを通して目に見えない繋がりがあるといえます。

例えば、ケシの花をモチーフにした「Unikko」のデザインで知られるマリメッコ。

日本から遠く離れたフィンランドで誕生したブランドながら、日本人の所属デザイナーも多いです。

また。脇阪克二氏や鈴木マサル氏、石本藤雄氏ら日本人デザイナーはマリメッコに勤めた後、自身のブランドを展開しています。

さらに、皆川明氏は北欧と日本の染織文化を融合させ、より親しみやすいテキスタイルブランド「minä perhonen(ミナ ペルホネン)」を生み出しました。

日常の中でふと気付く、花の色や季節の移ろい。厳しい自然を生き抜く動物たちの営み。

テキスタイルデザインは、何気ない視線から受けたインスピレーションを日々の暮らしに反映してくれます。

そこに国境がないからこそ、北欧であれ日本であれ、愛され続けるデザインが生まれるのでしょう。

テキスタイルの魅力とは、アートとの距離を縮め、一人ひとりの世界を広げてくれるところだといえるのではないでしょうか。



紫原もこ Shihara moko

創作の分野はからっきしですが、美術館めぐりが好きなライター。西洋美術ではゴッホに惹かれ、東洋美術では陶磁器や染色、民芸品などに関心があります。国内外問わず、いつか行きたい美術館リストが更新され続けている今日この頃です。