こどもと楽しむアート教育~生きる力を育む対話型鑑賞のすすめ~


「子どもにはアート教育がいいって聞いたけど、何をすればいいのか分からない」
「親自身は絵が好きだけど、子連れで美術館にいくのはハードルが高い」

この記事は、そんな方に向けて書いています。

わたしは、幼稚園児から小学生までの4人の子どもを持つ母親です。

まずは、昨夜のわが家での会話をお聞きください。


ARTiATEの作品を見て、子どもと対話する

「猫が海に落ちて、魚が神様で、泣いてる絵。」
「猫のくるま!」
「クリスマスツリーみたい。」
「あさがおに猫がうもれている。」
「おしゃれな壁のお風呂かな?」
「お魚が結婚してる!」
「お正月みたい!」


原田よもぎ『猫の夢』(ARTiATE)

ARTiATEにある、原田よもぎさんの作品『猫の夢』。

こちらの作品を、4人の子どもに「何の絵だと思う?」と見せてみたところ、さまざまな答えが返ってきました。

もちろん、タイトルなどは見せず、絵の画像のみを見てもらいました。

「何を見てそう思ったの?」とか「あぁ、この部分ね、そうかー。」など相づちを入れていくと話が広がり、聞いているだけで楽しい時間でした。


子どものこころを育む、対話型鑑賞とは?

わたしの昨夜の会話のように、「楽しくおしゃべりしただけで、教育になるの?」と疑問に思われるかもしれません。


アート作品をみて対話をすることで、さまざまな能力やこころを育むことができる教育法は「対話型鑑賞」と呼ばれています。

「対話型鑑賞」が開発されたのは1980年代半ば。アメリカのニューヨーク近代美術館(MoMA)からはじまりました。知識や背景などの情報に注目して作品を見るのではなく、自分が感じたこと、考えたことを数人で語り合うというものです。

アートを通した対話で育まれる能力は数多くあり、自ら考え、困難を乗り越えたり、コミュニケーションを深めたりできる力、いわば「生きる力」を育むことができます。

親子で対話を楽しむことは、子どもとのかけがえのない時間となり、こころの栄養にもなるでしょう。


対話型鑑賞の方法やポイント

近年、対話型鑑賞のワークショップなどを行っている美術館もありますが、子連れで美術館へ行くのは、なかなかハードルが高いもの。現にわたしの住む田舎のように美術館がない地域もありますよね。

そこで、ここからは家庭でもできる方法を紹介します。

対話型鑑賞では、親はファシリテーター(進行役)になります。

  • 「作品の中で何が起こっている?」
  • 「作品のどこからそう思った?」
  • 「他にも気づいたことはある?」

これらのことを中心に対話しますが、まだ年齢が低かったり、子どもからなかなか言葉が出てこないときは、子どもに合わせた言葉で質問してみてください。例えば、「この絵、なににみえる?」「発見したことはなに?」「どんな音がきこえてきそう?においがしそう?」「いつかな?」「どこかな?」「だれがいるかな?」といった質問です。

「そう思ったんだね、よく気がついたね。」「なぜそう思ったの?」と肯定したり、深掘りしたりと、会話を広げるパスを出すとさらに楽しくなりますよ。

年齢が上がってきたら、絵をもとにどこの国や地域で描かれたものなのか?どんな時代背景があったのか?と広げていくことで、さらに深く能動的な学習にもつながります。


対話型鑑賞の題材

題材を選ぶときは、「この子には難しいかな・・?」「怖がったらどうしよう?」などと決めつけないことが大事だそうです。子どもを信じていろいろな作品を見せてあげましょう。

美術館に行く


実際のアートに触れることは、空気感、におい、質感など五感で感じられるほかに、思い出やエピソード記憶として残るなど、とても大事な体験ですよね。

ポイントは、すべての作品を見なくていいということ。子どもが気に入った作品に深く入り込んで鑑賞してみてください。

オンライン美術館を活用

近年、自宅にいながら楽しめるオンライン美術館も増えています。

世界中から2000以上の美術館が参加している「GoogleArts&Culture」では、アート作品の画像が見られるだけでなく、実際に美術館を訪れている感覚を疑似体験できるストリートビュー(室内)の機能もあります。

他にもルーヴル美術館やシカゴ美術館、メトロポリタン美術館など作品を公開している海外の美術館も多いので、お気に入りを探してみるといいでしょう。

絵本

アートが楽しめる絵本も豊富にあります。

対話型鑑賞をする場合には、文字を読むのは後にして、まずはじっくり絵を鑑賞してから文字情報をチェックすると、より理解が深まりそうですね。

とくに紙の本は手元に置いて何度も見返すことができるので、子どもにとってお気に入りの作品が見つかるかもしれません。

子ども自身の絵


子ども自身の絵も立派な作品です。

子どもが何をどんな風に表現したのか聞くのもいいですし、何を描いたか覚えていないような昔の作品を出してきて、対話するのもいいでしょう。


おわりに

対話型鑑賞の方法やコツ、題材選び、わが家での実例を紹介してきました。

わが子と対話型鑑賞をしている際にも、「作家さんの意図は?」と気を遣ってしまう、自分自身の大人ぶりに笑えてきたほど、アートに対して情報重視の見方をしていたことに気がつきました。

子どもの新鮮でユニークなエッセンスを取り入れながら、アートを楽しめるようになるのは、実は大人の方だったりして・・なんて思います。

アートを通した子どもとの対話、楽しんでみてくださいね。



くるみ

ライター。4人子育て中の田舎暮らし主婦。歴史・食・子育てが得意分野です。アートを見ると、作品がつくられた時代に遡って歴史とつなげたくなってしまいます。好きな画家はジュゼッペ・アルチンボルド。