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「版画」と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。
小学校の図工で彫った木版画。お正月の年賀状。あるいは、浮世絵。
どれも版画だ。でも、今の版画はもっと自由で、もっとおもしろい。知らなくても、好きになれる。

絵を描くアートと、版画には大きな違いがある。版画は「刷る」。
版をつくり、インクを載せ、紙に転写する。そのプロセスの中で、アーティストの手の力加減や、インクのにじみ、紙の吸い込み方によって、一枚一枚が微妙に違ってくる。
同じ版から生まれるのに、まったく同じものはない。そこが版画のおもしろさだと思う。

版画にはいくつかの種類がある。ざっくり言うと、版の素材が違う。
銅版画——銅の板に細い線を彫り、インクを詰めて刷る。繊細な線と深い色合いが特徴。
木版画——木の板を彫って刷る。木目の表情がそのまま作品に出る。温かみがある。
シルクスクリーン——メッシュの版を使い、インクを押し出して刷る。鮮やかな色面が得意。ポップな作品に多い。
覚えなくていい。見て「これ好き」と思った作品が、たまたま銅版画だった。それでいい。

版画の隅に「3/30」のような数字が書いてあることがある。これがエディション(限定部数)だ。
30枚だけ刷った中の3枚目、という意味。つまり、世界に30枚しかない。印刷物とは違う、限られた一枚だ。
エディションがあるから、一点ものの油絵に比べて手が届きやすい。でも、一枚一枚アーティストが手で刷っているから、ポスターとは全然違う。その「あいだ」にいるのが、版画のいいところだと思う。

版画は画面越しでも楽しめる。でも、実物を見ると、もうひとつ別の世界がある。
紙の手触り。インクの厚み。光にかざしたときに見える、版の跡。それは印刷では再現できないものだ。
知識がなくても、触れれば感じる。「あ、なんかいいな」と思えたら、もうそれで十分だ。

版画の歴史は長い。技法も奥が深い。でも、それを知ってから好きになる必要はない。
ARTiATEには、銅版画、木版画、シルクスクリーンの作品がある。技法の違いを気にせず、ただ眺めてみる。目が止まったら、それで十分だ。
知識はあとからついてくる。好きが先でいい。
「わからない。でも好き。」
版画との出会いも、そこから始まる。
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Writer 「わからない。でも好き。」——感性で選ぶアートとの出会いを届ける。 |