美術初心者とアートのある暮らし

昨今、ありとあらゆる情勢の変化に合わせて様々なものが目まぐるしく変わりました。
日常における変化は自分で思っているよりエネルギーを使うものです。最近「なんか疲れてるな」と感じていませんか?

こんな時はただ、美しいものを眺めてみるのがいいかもしれません。
特に私がオススメしたいのは美術品、いわゆるアートを眺めることです。

アートを自分の家に飾るのは敷居が高いと思う方も多いでしょう。でも、純粋に「キレイだな」と思えるアートって意外と身近になってきてるんですよ。

今回は美術館にたまに行く程度の美術初心者の私が、自宅に飾るアートを選ぶ道のりをご紹介したいと思います。


花を飾る、画集を開く、ほっとする時のひと手間

少し前まで、私は部屋に生花を飾っていました。プレゼントに花瓶を頂いたのをきっかけに「お花を飾る人」に憧れ、近くの生花店で度々購入してはそれに生けていたのです。

しかし、生花は毎日花瓶を清潔にしお水を取り替えるのはもちろん、購入直後に水揚げをしたり、飾ってる最中に花弁や枯れた部分が周囲を汚したりと手間のかかる趣味でした。

美しいものをただ眺めてほっとする時間を作りたいだけなのに、手間がかかっては本末転倒です。
次第に、生花を飾るのはごくごくたまにしかしなくなってしまいました。

私はどうしてもほっとする時間を諦めきれず、次は画集を手に入れては眺めるようになりました。
このアイデアはとてもよかったです。生花よりはずっと手間が少ないですし、私のお部屋ではソファから手を伸ばせば本棚ですから比較的すぐにほっとする時間を作れます。

ただ、しばらく続けていると折り目がついてしまったり、画集自体が重かったりとわずかの手間や気になる点が出てきました。
そして何より、それはあくまで本としての印刷物でしかなく、美術館で「本物」のアートを見た時の凄みはあまり感じられそうにありませんでした。

それならばいっそ、アートを手に入れてしまうのはどうだろう。
アートであれば壁や棚に飾り、ふとした時に眺めることが出来ます。しかも毎日水をあげる必要も、手に持つ必要すらありません。

いつもの生活空間に、アートが存在するという妄想は私をわくわくさせました。
そうして私はいつの間にか「アートのある暮らし」実現に向けて動き出すのです。


アートがある空間は清潔にしたくなる

まずは美しいものをどこに置こうか、どこが相応しいかと考えました。
私の部屋は本や趣味のもの、洋服が雑然と置いてあり、とてもアートを置ける状況ではないと気付きました。

であれば、空間を作るしかありません。
私は10日間、一日約5時間かけて物を減らし、あらゆるものを拭き清めました。
ちなみに物を残す基準は「代わりのないもので必要な物か」、「美しいものにふさわしいか」、それだけです。

作業はスムーズに進みました。
飾りたいのは絵なのか造形なのかも決まっていなかったのですが、生活空間に美しいものを置きたいという欲望がこれほどモチベーションになるとは思いませんでした。

飾りたいアートを妄想
この断捨離は正解でした。
元々の目的であるアートに相応しい場や空間を作ることだけでなく、自分がどんなものを好むのか「美意識の方向性」を定めることが出来ました。

自分でも意識していなかった美しいと思う条件がそこにはあったのです。

ある程度目途がついた最終日、埃を払った先に白い壁が現れました。それはキッチンの壁で、今まで用途不明の机があったところです。


「どこでアートを手に入れるのか」ギャラリー編

断捨離を終え、私の部屋は清々しく生まれ変わりました。しかしどこか物足りなさもあります。
この物足りなさを美しいもので補う。否、美しいものが存在しないから物足りないのだと思いました。

そして、アートのある暮らし実現計画を思いついてからというもの、頭の隅にくすぶっていた「どこでアートを手に入れるのか」の問題が急に現実的になったのです。

まず、思いついたのはギャラリーに行くことでした。
渋谷にあるBunkamuraギャラリーは思ったより人が多く、入りやすかったのでうっかり私も一度入ったことがあるのです。
そのギャラリーではA3サイズの絵画が10〜20万円程度で販売され、「買えない値段ではないな」と感じたことを覚えています。

もしかしたらその原体験が、アートを買う意識に影響しているかもしれません。

とはいえ、美術館とは違い、ギャラリーは最終的に購入を目的としている場。しかも高額なアートばかりのイメージが敷居を高くしています。
興味はありながらも、その後ギャラリーに行ったことはありません。
ですが、「ギャラリー」、「アートスペース」、「画廊」等の検索ワードを使ってインターネットで調べると、人が多そうで敷居の高くなさそうなギャラリーをいくつか見つけることが出来ました。

ホームページだと内部が分かりづらい場合はTwitterやinstagramでギャラリー名を検索すると雰囲気が分かりやすいです。

「ARTiATE」内でも個展をいくつか紹介しております。ぜひEXHIBITONからご覧になってみてください。

調べている内に、ギャラリーとは最先端の現代アートに触れられる場所だったんだと改めて思いました。
実物の空気感は現地ならでは。少し勇気を出して近々ギャラリーに足を運んでみたいですね。


「どこでアートを手に入れるのか」オンライン通販編

最近のアート販売の場はインターネット通販も主戦場です。
実物を見られないというデメリットはありますが、人目を気にせずいくらでもゆっくり選べるのは大きなメリットでしょう。

私は例の白い壁を眺めながらタブレットで作品を探し、良さそうなものがあればそのまま拡大してタブレットごと壁に飾るようにしてイメージを膨らませています。

これは家にいるからこそ出来る、アートの選び方です。

ARTiATEで紹介されている作品もタブレットに映して眺めてみました。

大きすぎないアートが多くありますし、イメージのしやすい作品ばかりなので迷うくらいでした。
その中でも松野 佳奈さんの「ゆらぎ」は額装も含め、理想に近いものでした。お値段も予算内です。他にも候補があるので即決というわけにはいかないですが、こうやって「アートのある暮らし」を具体的に妄想出来るのがインターネット通販の良いところだと思います。


アートを手に入れる手段は多岐に渡る

他にもSNSを通じて直接アーティストと会ったり(個展がそれに近いですね)、現存するアートではなくオーダーメイドという手段もあります。

いずれにしても「アートのある暮らし」はさほど遠くなく、特にインターネットの発達した現代社会ではより身近になったと言えます。
素敵な洋服や家具を選ぶように、アートも選べるようになってきたということなのです。

白い壁と対峙して一ヶ月が経ちました。
急ぐものでもないですから、自分のペースでいつまでも眺めていたい宝物を見つけようと思います。


Writer
カワバタユキ

僕はいつまでも飽き性ちゃん名義で「一日一エンタメ」を摂取し、エッセイをほぼ毎日書いている駆け出しライター。「コンビニ帰りに美術館に寄ったっていい」をモットーとしており、最近は絵を買おうと現代アートにも手を出しつつある。知識は全くない美術素人。